大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)563号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人百瀬武利上告趣意について。

しかし、博奕(ばくち)という言葉が、博戲の俗語であることは、顕著の事実であるし、原判決に「本件賭博行爲を爲した事跡に徴して」と説示しているところから見ても、原判決においては、所論の「賭錢博奕」の語を金錢を賭してする博戲即ち刑法第一八五條同第一八六條にいわゆる博戲の義に用いているものであることは明白である。されば、原判決には所論のように刑法の定めていない「博奕」という行爲を處罰したという違法はない。論旨は理由がない。

同第二點について。

しかし、原判決において「花札を使用して俗に「三枚」と稱する賭錢博奕を爲したものである」と判示している以上、たとえ三枚という博奕の方法内容を詳述しなくとも、花札を使用し偶然のゆえいに關し財物の得喪を爭ったものであることを判示したものであることは自ら明らかであるから、原判決には所論のような罪となるべき事実についての説明を缺いたという理由不備の違法あるものとはいえない。論旨は理由がない。

同第三點について。

しかし、賭博の常習者というのは、賭博を反覆累行する習癖ある者を指すのである。さればかゝる習癖の認められる以上假に所論のように、被告人の前科である賭博が「バカ」又は「後先」であって、本件賭博が「三枚」であり、本件賭博は最後の前科のときから九月を經た後のものであり、被告人が靴修繕業に従事している者であるとしても、被告人を賭博常習者と認定するに何等妨ぐるところでない。そして、原判決において、常習の點について摘示した前科の事実からして、原判決が被告人を賭博常習者と認定したからといって、何等実驗法則に反したかどはない。所論は結局、原審の裁量權に屬する賭博常習についての事実認定を非難するにとどまるものであるから、上告適法の理由とはならない。論旨は理由がない。

よって刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例